ウイルス制御分野 博士課程2年 蜂谷敦子
2007.2.25〜3.4 Los Angeles and Columbia in Missouri.


今回の出張目的は、CROI (14th Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections)で発表をすること、そしてミズーリ大学にて講演をし、Dr.Sarafianosらと研究打ち合わせをすることでした。

 
発表内容
A Novel mutation, N348I in HIV-1 reverse transcriptase induced by NRTI treatment, confers Nevirapine resistance.


薬剤感受性試験においてNVP高度耐性を示すにもかかわらず、該当する耐性変異が存在しないという検査結果の乖離したウイルスを見いだした。

このウイルスから、NVPに対する新たな耐性変異、N348Iを同定した。

興味深いことに、この耐性変異はNVP治療中ではなくd4T/ddI/IDV治療中に出現し、治療中断とともに消失していた。NRTIによる耐性誘導が考えられ、その後のNRTIに対する薬剤感受性試験の結果から、AZT、ddIに対しても耐性を示すことが明らかとなった。

初めてのNRTIとNNRTIに対する多剤耐性変異の報告であり、またこの耐性変異の出現頻度が高いこと、さらには現在行われている大多数の薬剤耐性検査やリコンビナントウイルスによる薬剤感受性試験の解析領域にN348Iが含まれていないことから、今後耐性検査法を見直す必要性があると考えられた。

 
発表ならびに打ち合わせの成果
今回報告した耐性変異は、初めて作用機序の異なる薬剤に対する多剤耐性変異であったために、学会で注目されることとなった。ポスター発表、ポスターディスカッションを通じて、自分達の研究に対する貴重なコメントを頂くことが出来ただけでなく、他の研究者らが我々の研究に対して興味を抱いているポイントを知ることが出来た。
 
海外発表の感想
今回ロサンゼルスで開催されたCROIは、臨床研究、基礎研究を含め、1000近い演題が発表される大きな学会です。

学会に通ったことだけで満足するのではなく、数多く発表される演題から、いかにして注目されるような研究発表をするべきか、また限られた時間内で印象深くなるようにアピールをしなければならないということが必要であると実感させられました。

ミズーリ大学では、共同研究の先生以外の研究者とも話す機会がありました。みな自分の研究について説明をしてくださり、その上でディスカッションを求められました。

違う研究をしている人の意見は、新たな考察への切り口となるのでしょう。日常的にディスカッションが行われている国なのだと感じた反面、研究者として自分に足りないものが何であるか考えさせられる出張となりました。
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