主な業績

2021年-

Nozomi Kuse,* Hayato Murakoshi,* Tomohiro Akahoshi,* Takayuki Chikata, Katherine L James, Hiroyuki Gatanaga, Sarah L Rowland-Jones, Shinichi Oka, and Masafumi Takiguchi (*equal contribution), Collaboration of a detrimental HLA-B*35:01 allele with HLA-A*24:02 in co-evolution of HIV-1 with T-cells leading to poorer clinical outcomes, J. Virol. 95: e01259-21, 2021
 我々は以前に、HLA-A*24:02拘束性のHIV-1特異的T細胞により選択されるNefY135F変異がHLA-B*35:01を保有した感染者に蓄積することが、HLA-B*35:01陽性者がエイズ進行促進する機序の一つである可能性を示した(EBioMedicine 36:103-112, 2018)。本研究では、HLA-B*35:01拘束性エピトープであるNefYF9に特異的なT細胞とNefY135Fを有した変異エピトープNefFF9を認識するT細胞を解析した。その結果、wild-type(WT)ウイルスに感染している人では、WT特異的T細胞かFF9とYF9の両方を認識するcross-reactive T細胞が誘導されており、変異ウイルスに感染している人では、変異ウイルス特異的T細胞かcross-reactive T細胞が誘導されていることが明らかになった。WT特異的T細胞を保有している感染者は、変異ウイルス特異的T細胞かcross-reactive T細胞を保有している感染者よりpVLが有意に低いことより、感染者体内でWT特異的T細胞はHIV-1増殖抑制に関与しているが、変異ウイルス特異的T細胞およびcross-reactive T細胞はHIV-1の増殖抑制に関与していない可能性が示唆された。しかしながらこれらのT細胞は、変異ウイルス感染細胞を in vitroでは認識することから、生体内で変異ウイルス感性細胞の認識を抑制する機序があると考えられた。T細胞の認識を抑制する分子と認識を促進する分子の細胞表面での発現をex vivoのT細胞で調べたところ、cross-reactive T細胞では抑制分子であるPD-1の発現は他のT細胞より高いこと、変異特異的T細胞では促進分子でもあるCD160や2B4の発現が低いことが明らかになった。これらの分子の発現のレベルにより、変異ウイルス特異的T細胞およびcross-reactive T細胞は、感染者体内でHIV-1の増殖抑制能が低下することが明らかになった。本研究により、HLA-A*24:02とHLA-B*35:01が共同して、HIV-1特異的T細胞を介して、エイズ発症促進に関与することを明らかにできた。
Nozomi Kuse, Tomohiro Akahoshi, and Masafumi Takiguchi, STING ligand-mediated priming of functional CD8+ T-cells specific for HIV-1 protective epitopes from naive T-cells, J. Virol. 95: e00699-21, 2021
 長期間治療を受けているHIV-1感染者のメモリーT細胞から誘導されるHIV-1特異的CD8陽性T細胞は機能の低下・欠損が見られる。そこでナイーブT細胞から新たに誘導され高機能を有するHIV-1特異的CD8陽性T細胞が完治療法の戦略‘‘shock and kill’’において、活性化させた潜伏感染細胞を排除するエフェクターT細胞として重要になってくる。特に変異性が少ないconserved領域を認識でき、生体内で強いウイルス抑制能を発揮できるprotectiveエピトープ特異的CD8陽性T細胞は完治療法において有望である。そこで本研究はSTINGリガンド用いてHLA-B*52:01およびHLA-C*12:02拘束性のprotectiveエピトープ特異的CD8陽性T細胞の誘導をナイーブT細胞から試みた。4つのHLA-B*52:01拘束性のエピトープのうち3つがSTINGリガンド 3’3’-cGAMPによってナイーブT細胞から誘導できることが確認できた。一方でHLA-C*12:02拘束性の3つのエピトープについてはすべて特異的T細胞の誘導が見られなかった。誘導できたHLA-B*52:01拘束性T細胞は強いウイルス抑制能を持ち細胞傷害活性に関与する分子の発現量も高いことが分かった。さらにウイルス抑制能はパーフォリンの発現量と相関し、CD107aの発現量の高さと相関ある傾向がみられた。本研究によって、STINGリガンドはナイーブT細胞から高機能を持つprotectiveエピトープ特異的CD8陽性T細胞の誘導が可能であり、誘導できたT細胞は‘‘shock and kill’’においてエフェクターT細胞として今後利用できることが示唆された。
Yu Zhang, Hayato Murakoshi, Takayuki Chikata, Tomohiro Akahoshi, Giang Van Tran, Trung Vu Nguyen, Hiroyuki Gatanaga, Kinh Van Nguyen, Shinichi Oka, Nozomi Kuse, and Masafumi Takiguchi, Effect of difference in consensus sequence between HIV-1 subtype A/E and subtype B viruses on elicitation of Gag-specific CD8+ T cells and accumulation of HLA-associated escape mutations, J. Virol. 95: e02061-20, 2021
 Gag280では、日本人のHIV-1 subtype B感染者では、HLA-B*52:01陽性者でGagT280A/S変異の蓄積が見られるが、GagV280がconsensus sequenceであるHIV-1subtype A/Eに感染しているベトナム人の感染者では、HLA-C*01:02陽性者でGagV280T変異の蓄積が見られる。最近の我々の研究により、Subtype B感染者では、HLA-B*52:01拘束性GagRI8特異的CTLによりGagT280A/S変異の選択と蓄積、またGagT280V変異の選択が起こるが、GagT280V変異ウイルスによりGagRI8変異エピトープ特異的CTLが誘導され、それによるGagV280Tの選択が起こることから、GagT280V変異ウイルスは蓄積されないことが明らかになった。一方、Subtype A/E感染者では、HLA-C*01:02拘束性GagYI9特異的CTLによりGagV280T変異が選択されることが推測された。このように、Gag280は2つのHIV-1 subtype間でconsensus sequenceが異なっており、この部位を認識する異なった免疫圧が誘導され、その結果異なった逃避変異の蓄積が起こると推測された。本研究では、この2つの異なったHIV-1 subtypeウイルスが感染しているコホート間で、Gag280での逃避変異の選択と蓄積の機序を解析した。HLA-C*01:02拘束性GagYI9特異的CTLは、subtype A/E感染者では高頻度で誘導され、GagV280T変異の選択をする。しかし、この変異エピトープに対するCTLの誘導が弱いため、GagV280T変異の蓄積がされると考えられた。一方、subtype B感染者ではGagYI9特異的CTLの誘導頻度は低く、HLA-C*01:02によるGag280の変異蓄積は起こらないと考えられた。このように、HIV-1のconsensus sequenceの違いにより誘導されるT細胞が異なり、蓄積される逃避変異も異なることが明らかになった。
Hayato Murakoshi, Takayuki Chikata, Tomohiro Akahoshi, Chengcheng Zou, Mohamed Ali Borghan, Giang Van Tran, Trung Vu Nguyen, Kinh Van Nguyen, Nozomi Kuse, and Masafumi Takiguchi, Critical effect of Pol escape mutations associated with detrimental allele HLA-C*15:05 on clinical outcome in HIV-1 subtype A/E infection, AIDS 35: 33-43, 2021
 エイズ発症促進には何種類かのHLAが関わっていることは知られているが、その機序についてはほとんど明らかとなっていない。我々の以前の研究で、ベトナム人HIV-1サブタイプA/E感染者では、HLA-A*29:01-B*07:05-C*15:05ハプロタイプがエイズ発症促進に関与しており、これらのHLAに相関するHIV-1のPol 653/657でのアミノ酸変異がpoor clinical outcomeに関連していることが示された。しかしながら、このメカニズムについてはまだ解明されていなかった。そこで本研究では、Pol 653/657を含むT細胞エピトープの同定を試み、エピトープ特異的T細胞の抗原認識能に及ぼすPol 653/657での変異の影響を解析し、逃避変異の蓄積によるT細胞の認識の低下がエイズ発症促進の原因になる可能性を調べた。
 オーバーラップHIV-1ペプチドを用い、Pol 653/657を含むHLA-C*15:05拘束性Pol SL9エピトープを同定した。SL9特異的T細胞の抗原認識能に対するSL9中のHLA-C*15:05相関アミノ酸変異の影響について解析した結果、Pol S653A/T/L変異がSL9特異的T細胞のHIV-1感染細胞の認識能を減弱させることが示され、これら3つの変異はT細胞からの逃避変異であることが判明した。さらに、これらの変異ウイルスに感染したSL9エピトープ反応陽性者は、Wild-typeウイルスまたはPol S653K/Q変異(HLA-C*15:05と無相関)ウイルスに感染したエピトープ反応陽性者よりも有意にCD4T細胞数が低いことが認められた。
 以上本研究により、HLA-C*15:05陽性サブタイプA/E感染者では、Pol S653A/T/L逃避変異がSL9特異的T細胞のHIV-1増殖抑制能を減弱させ、エイズ発症を促進させることが示唆された。


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