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原田 信志 Harada, Shinji
大学院生命科学研究部・教授(医学教育部専任) ウイルス学・医学博士
拠点形成の総括補佐・拠点運営会議 HIVに対する中和抗体の解析


原田 信志 Harada, Shinji HIV-1に対する中和抗体の作用機序
ウイルス中和抗体はウイルスのレセプターへの吸着を阻害し、あるいは侵入や脱殻を阻止し、感染を制御する。つまり、ウイルス感染の初期過程に大きな影響を与える。

我々は、HIV-1の感染が細胞膜とウイルスエンベロープの流動性によって形成されるfusion poreによって大きく影響されることを示した(1)。その後、膜流動性を左右する因子の解析を行い、グリチルリチンやある種の糖脂質が膜の流動性を抑えるのに従って、HIV-1の感染を抑制することを報告した(2,3)。それらの研究で、グリチルリチンや糖脂質がHIV-1粒子に直接作用し、HIV-1の感染性を低下させることを示した。


この現象は中和抗体の作用に類似していると考え、中和抗体の膜流動性への影響を調べた。
HIV-1のV3を認識する特異的中和抗体もウイルス蛋白以外のエピトープを認識しHIV-1を中和する非特異的中和抗体もウイルス粒子と結合することでエンベロープの流動性を低下させた(4)。中和は複数の機序で行われると思われるが、作用は弱くても、HIV-1変異と関係ないエピトープを認識する新たな中和抗体の誘導が今後のワクチン開発に必要であろう。


1. Harada, S., Yusa, K., Monde, K., Akaike, T., Maeda, Y., 2005. Influence of membrane fluidity on human immunodeficiency virus type 1 entry. Biochem. Biophys. Res. Commun. 329, 480-486.
2. Harada, S., 2005. The broad anti-viral agent glycyrrhizin directly modulates the fluidity of plasma membrane and HIV-1 envelope. Biochem. J. 392, 191-199.
3. Harada, S., Yokomizo, K., Monde, K., Maeda, Y., Yusa, K., 2007. A broad antiviral neutral glycolipid, fattiviracin FV-8, is a membrane fluidity modulator. Cell. Microbiol. 9, 196-203.
4. Harada, S., Monde, K., Tanaka, Y., Kimura, T., Maeda, Y., Yusa, K., 2008. Neutralizing antibodies decrease the envelope fluidity of HIV-1. Virology 370, 142-150.


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