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松下 修三 Matsushita, Shuzo
エイズ学研究センター・教授(医学教育部専任) 感染症学・医学博士
若手研究者育成委員会 エイズ患者における液性免疫の解析


松下 修三 Matsushita, Shuzo エイズ患者における液性免疫の解析
HIV-1に対する中和抗体はエイズワクチン開発の重要な因子と考えられていますが、どのような抗体を誘導すべきかさえいまだに明らかではありません。
これまでにも、広範囲の臨床分離株を中和する抗体に関して様々な研究がなされてきましたが、ヒトにおいてどのような抗体が感染防御に有効かについても不明のままです。我々はHIV感染細胞に特異的に反応し、中和する単クローン抗体、0.5ャ^を世界で初めて作製し、中和エピトープがエンベロープgp120のV3-loopであることを報告しました(J.Virol.1988)。引き続く研究で、0.5βのキメラ化抗体(Cャ^-1)が、チンパンジーへctHIV感染を、単クローン抗体のみで阻止することを示し、ワクチン開発にインパクトを与えました(Nature 1992)。その後HIV-2やSIVに対する中和単クローン抗体を次々と作製し、この分野の発展に貢献しました。

一方、中和抗体が感染症例の体内においても有効に作用しているという証拠はありませんでした。
我々は、抗ウイルス治療開始時に分離した自己由来のウイルスを中和する抗体が、抗ウイルス療法下に出現することを報告しましcX[1]。さらに、中和抗体存在下にリバウンドしてくるウイルスが、エスケープ変異株であることを証明しましcX[2]。
これは、in vivoにおいても、中和抗体がウイルスの選択圧になっていることを示しています。我々は、化学及び血清療法研究所と共同で、欧米及び日本で感染例が多いサブタイプBウイルスの約半分に反応し、中和するヒト型単クローン抗体、KD-247を米国において臨床開発中でcL[3]。
臨床応用に関連する基礎研究として、in vitrociKD-247に対する中和抵抗性ウイルスを誘導したところ、変異株cwCCR5阻害剤に高度感受性となることを観察しました。中和抗体cjCCR5阻害剤は同じエントリーの過程を阻害することから、in vitroで強力な相乗効果を認め、今後の併用療法に示唆を与えました[4]。
また、臨床分離株を用いて、感染阻止に有効な中和抗体がどのような特徴をもつものか、中和抗体に対してウイルスがどのようにエスケープ変異を獲得していくのか、という研究を、新規中和抗体の作成や、中和耐性株の誘導通じて行っており[5]、これらの研究成果に基づいて、治療用中和抗体の開発や中和抗体誘導型のワクチン開発をめざしています。

References
1. Kimura, T. et al., J. Infect. Dis., 185: 53-60, 2002
2. Wang, F.X. et al. J. Infect. Dis., 185: 608-617, 2002
3. Matsushita, S. et al., Human Antibodies: 14, 80-88, 2005
4. Yoshimura, K. et al., AIDS, 20: 2065-2073, 2006
5. Shibata, J. et al., J. Virol., 81: 3757-3768 2007


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