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滝口 雅文 Takiguchi Masafumi
エイズ学研究センター教授(医学教育部専任) 感染免疫学・医学博士
拠点形成の総括補佐(拠点事務局長)・拠点運営会議 HIV-1の細胞性免疫の解析とエイズワクチンの開発


滝口 雅文 Takiguchi Masafumi HIV-1の細胞性免疫の解析とエイズワクチンの開発
1993年以降HIV-1に対する細胞性免疫学の研究を行っており、特に数多くの細胞傷害性T細胞(CTL)が認識するエピトープの同定に成功し、この分野の研究の発展に貢献してきた。
その後、HIV-1特異的CTLによるHIV-1の増殖抑制の機構、CTLからの逃避変異の解析、HIV-1特異的CD4T細胞の解析、HIV-1感染・病態解析モデルマウスの作成などの研究を行っており、以下のような研究業績と研究計画がある。

[1] HIV-1特異的CTLによるHIV-1の認識と増殖抑制の機構の研究
HIV-1特異的CTL が認識するCTLエピトープを、reverse immunogenetics (Nature 360:434-439, 1992.)という以前に確立した方法を用いて数多くを同定してきたが(AIDS 10:1075-1083, 1996, J. Immunol. 158:5026-5034, 1997, J. Immunol. 159:6242-6252, 1997. etc.)、さらにoverlapping peptidesを用いた方法でHIV-1CTLエピトープの同定の研究を継続している。 これらの多くのHIVエピトープを認識するCTLを作製し、これらを用いてHIV-1特異的CTLがCD4T細胞やマクロファージでのHIV-1増殖抑制能を抑制するかを調べる方法を確立し(J. Immunol. Cutting Edge 174: 36-40, 2005. Blood 109:4832-4838, 2007)、 どのようなCTLが生体内でHIV-1の増殖に働いているかを検討している。

[2] HIV-1特異的CTLからのHIV-1の逃避に関する研究
HIV-1は、HIV-1特異的CTLから認識されるエピトープ部位を認識できないアミノ酸に変異(逃避変異)させることにより、逃避していることが知られている。我々は世界9か所のコホートでの解析で、これらの逃避変異が蓄積してきており、HIV-1はより免疫が認識されにくいように進化していることを明らかにした(Nature 458: 641-645, 2009)。これらのCTLから逃避するウイルスが出現しても、宿主の体内では新たに逃避変異に対するT細胞は誘導できないと考えられていたが、HLA-A*2402拘束性のNef特異的CTLから逃避した変異エピトープに対して新たに特異的CTLが誘導できることを明らかにした(J. Virol. 82: 138-147, 2008)。現在これら逃避変異を認識できる逃避変異特異的なCTLの存在とそのレパートリーに関する研究を行っている。

[3] HIV-1特異的 CD4 T cells のHIV-1認識機構とその役割に関する研究
HIV-1特異的CD4T細胞は、ヘルパーT細胞としての役割を果たしていると考えられているが、Gag特異的CD4T細胞の中にはCTLが存在することが報告されている。我々は新たにNef特異的CD4T細胞にもCTLが存在し、このT細胞はHLA-DRにより細胞外及び細胞内の両方の機序で提示されるHIV-1エピトープを認識していることを明らかにした(J. Virol. In press)。さら現在多数のCD4T細胞エピトープの同定を試みており、HIV-1特異的CD4T細胞のHIV-1感染症での役割を研究している。

[4] ヒト化マウスによるHIV感染モデルマウスの開発とそれを用いたエイズワクチンの研究
免疫不全マウスにヒト臍帯血CD34細胞を移植することにより、ヒトの免疫系を構築し、このマウスにHIV-1を感染させることによりマウスにおけるHIV感染モデルの作成に成功している。現在これらのマウスからヒト細胞性免疫の誘導を試み、エイズワクチン開発のためのモデルを作成中である。



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