行政刷新会議「事業仕分け」第3WGによる
グローバルCOEプログラム評価に対する声明
 

行政刷新会議「事業仕分け」第3WGにより、11月25日に行われたグローバルCOEプログラム評価(評価結果:「予算要求の縮減(1/3程度縮減)」)に対し、グローバルCOEプログラム140拠点全リーダーによる共同声明を発表するため、下記の日程で記者会見を行いました。

ワールドランキングに見る本プログラムの成果とともに、このプログラムを展開している大学の状況や若手育成の重要性などを直接、国民及び政権与党関係者の皆様にお伝えすることにより、ご理解とご支援を要請するものです。

  平成21年12月3日(木)13:00〜14:00
東京大学本郷キャンパス 理学部1号館2階 小柴ホール


  行政刷新会議「事業仕分け」第3WGによる
グローバルCOEプログラム評価に対する声明

全グローバルCOE拠点リーダー
平成21年12月3日

  【はじめに】 
平成22年度の概算要求総額95兆円を削減するため、行政刷新会議による「事業仕分け」作業が行われ、先週末に終了しました。この作業の第3WGによる「グローバルCOEプログラムに対する評価」では、本プログラムおよび博士研究員(ポスドク)が我が国の学術研究分野で果たしている役割に対して、実状からかけ離れた誤解、認識不足に基づく評価コメントが出されており、驚いています。グローバルCOEプログラムでは、大学院の教育研究機能を強化し、世界をリードする人材を育成し、国際的に卓越した教育研究拠点を形成することを目的にして努力しています。その中でポスドクも大きな役割を果たしています。そこで、プログラム拠点リーダー有志で相談し、実状を説明し、我々の率直な意見を公にすることにしました。

【貧弱な高等教育予算】 

資源の乏しい我が国が発展していくためには、学術研究に対して充分な投資を継続的に行うことが不可欠であることは、言うまでもありません。すでにノーベル賞受賞者の方々も指摘されているように、科学・文明の振興は継続性が重要で、ひとたび大きな中断があると、回復不能の後遺症を伴います。現在、我が国の高等教育機関に対する財政支出の対GDP比率はOECD(経済協力開発機構)加盟国中最下位であり、各国平均値の半分というのが実情です。国民負担率や人口に占める大学進学率等で補正しても、その低さは際だっています。また、国立大学に対する運営費交付金が毎年1%ずつ、公立大学ではそれを上回って削減され続けている状況のもとで、日本の国公私立大学ではグローバルCOEプログラムをはじめとする教育研究活動を必死の思いで進めています。

【実績検証の一例】
 
21世紀COEおよびグローバルCOEプログラムの取組の成果として、我が国の大学に対する国際的な評価が大きく変わったことが各種統計データで明確に示されています。一例をあげれば、英国タイムズ社のランキングが開始された2004年には、世界ランキング100位および200位以内の日本の大学は、それぞれ4大学、6大学でしたが、2009年には6大学、11大学へと増加し、各大学とも着実にランクを上げ続けています。非英語圏の大学は不利と言われるこのランキングで、100位以内にドイツは4大学、フランスは2大学のみが選ばれていることを考えると、我が国が世界全体で4位という結果は、十分に評価されるべき数字と考えます。この間、科学技術振興に膨大な投資を行った中国、韓国の大学も、複数の大学がランキング入りを果たしています。このような東アジアの科学技術躍進の鍵となった大学院教育改革への意欲的な投資は、研究基盤と大学院教育の質の引き上げを通して、主要分野の核心的人材を養成するものとして欧米でも非常に高く評価されています。

【グローバルCOEとポスドクの重要性】 
大学における研究活動は、大学院生と博士研究員(ポスドク)が中心的な担い手となっています。世界最先端の分野で現在活躍する研究者や大学教員の多くも、ポスドクを経験することで鍛えられ、広い視野で研究を進める力を磨いてきたのです。こうした仕組みは、最先端の研究を担う世界中の大学や研究機関では当然のこととされています。国際的な標準では、博士課程の学生は研究資金によりリサーチ・アシスタント(RA)として雇用され、その給与で生活が可能です。これに対して我が国では、大学予算や科学研究費補助金のうち、「ポスドクやRAを採用」するための予算は微々たる現状が続いています。こうした現状を打開するために、世界を相手に最先端研究で競っている研究組織の中からグローバルCOE拠点が選考され、国際的な最先端研究の舞台で活躍できる研究者を輩出することを目標に、「大学院生やポスドクを含む若手研究者の育成事業と最先端研究を行う現場とが有機的に連携」して、人材育成と教育研究活動を推進しています。また、人材育成は決して短期間でできるものではなく、5年、10年と継続して初めてその結果が目に見えてくるものです。この点に関する指摘として寄せられた、「グローバルCOEは研究ではなく、教育であるなら大学が当然やるべきこと」、「グローバルCOEの成果評価に博士取得者の就職率向上を重点に置くべきである」、あるいは若手支援に対して「ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸」等のコメントは、ことの本質を理解していない認識の表れと言わざるをえず、まことに残念なことです。

【厳しい拠点審査による拠点の絞り込み】
 
本事業は、平成21年度を例に取れば、145件の申請のうちわずか9件しか採択されないなど、厳しい審査を経て、絞りに絞った教育研究組織が選ばれています。「140拠点は多くないか」との指摘は、全く的外れです。むしろ、多数の大学の中から各分野で十数件のみの採択は、あまりにも少なすぎます。
 このように、21世紀COEとそれを引き継ぐ形で進むグローバルCOEプログラムは、これまで日本の大学院教育改革をリードしてきました。特に、日本の将来を担うことになる大学院学生への支援に非常に大きな役割を果たしています。大学院学生への経済的な支援は、他の先進国では当然のこととされています。世界的に競争の厳しい科学技術分野では、一度遅れを取ったら、もう取り返しがつかないことになります。日本は「科学技術創造立国」とよく言われますが、それを支えているのはグローバルCOEに代表される大学院の高度な教育研究活動であることを忘れないでほしいと思います。経済状況が厳しい今こそ、国家として将来を担う人材への投資を怠ることがあってはならないと考えます。もちろん、大学院教育研究現場の一層の改革努力が求められるのは言うまでもない事であり、関係者一同、これまで以上に奮起することは当然のことと考えます。

 
グローバルCOE拠点リーダー 一覧     (140名)

【生命科学】
大隅典子(東北大学)、小島 至(群馬大学)、宮下保司(東京大学)、白髭克彦(東京工業大学)、近藤孝男(名古屋大学)、阿形清和(京都大学)、柳田敏雄(大阪大学)、片岡 徹(神戸大学)、島本 功(奈良先端科学技術大学院大学)、藤木幸夫(九州大学)、粂 昭苑(熊本大学)、吉川信也(兵庫県立大学)、末松 誠(慶應義塾大学)

【化学・材料科学】
宮浦憲夫(北海道大学)、山口雅彦(東北大学)、後藤 孝(東北大学)、中村栄一(東京大学)、竹添秀男(東京工業大学)、鈴木啓介(東京工業大学)、平井利博(信州大学)、渡辺芳人(名古屋大学)、澤本光男(京都大学)、福住俊一(大阪大学)、掛下知行(大阪大学)、君恊M夫(九州大学)、黒田一幸(早稲田大学)

【情報・電気・電子】
有村博紀(北海道大学)、安達文幸(東北大学)、山海嘉之(筑波大学)、保立和夫(東京大学)、渡辺 治(東京工業大学)、小山二三夫(東京工業大学)、石田 誠(豊橋技術科学大学)、田中克己(京都大学)、野田 進(京都大学)、村田正幸(大阪大学)、谷口研二(大阪大学)、大西公平(慶應義塾大学)、後藤 敏(早稲田大学)

【人文科学】
亀田達也(北海道大学)、島薗 進(東京大学)、小林康夫(東京大学)、峰岸真琴(東京外国語大学)、耳塚寛明(お茶の水女子大学)、佐藤彰一(名古屋大学)、子安増生(京都大学)、小泉潤二(大阪大学)、渡辺 茂(慶應義塾大学)、竹本幹夫(早稲田大学)、赤間 亮(立命館大学)、陶 徳民(関西大学)

【医学】
喜田 宏(北海道大学)、岡 芳知(東北大学)、嘉山孝正(山形大学)、中山俊憲(千葉大学)、門脇 孝(東京大学)、清木元治(東京大学)、野田政樹(東京医科歯科大学)、祖父江元(名古屋大学)、成宮 周(京都大学)、米田悦啓(大阪大学)、東 健(神戸大学)、平山謙二(長崎大学)、満屋裕明(熊本大学)、岡野栄之(慶應義塾大学)

【数学・物理学・地球科学】
井上邦雄(東北大学)、大谷栄治(東北大学)、上野信雄(千葉大学)、樽茶清悟(東京学大)、川又雄二郎(東京大学)、斎藤 晋(東京工業大学)、杉山 直(名古屋大学)、深谷賢治(京都大学)、川合 光(京都大学)、北岡良雄(大阪大学)、中川義次(神戸大学)、入舩徹男(愛媛大学)、若山正人(九州大学)、三村昌泰(明治大学)

【機械・土木・建築・その他工学】
圓山重直(東北大学)、藤野陽三(東京大学)、光石 衛(東京大学)、時松孝次(東京工業大学)、砂田憲吾(山梨大学)、福田敏男(名古屋大学)、松岡 譲(京都大学)、山内和人(大阪大学)、秋山秀典(熊本大学)、前野隆司(慶應義塾大学)、菅原進一(東京理科大学)、藤江正克(早稲田大学)、田村幸雄(東京工芸大学)、大窪健之(立命館大学)

【社会科学】
田村善之(北海道大学)、佐藤嘉倫(東北大学)、辻村みよ子(東北大学)、岩村正彦(東京大学)、藤本隆宏(東京大学)、沼上 幹(一橋大学)、深尾京司(一橋大学)、大塚啓二郎(政策研究大学院大学)、落合恵美子(京都大学)、大竹文雄(大阪大学)、吉野直行(慶應義塾大学)、萩原能久(慶應義塾大学)、田中愛治(早稲田大学)、上村達男(早稲田大学)

【学際・複合・新領域】
山口隆美(東北大学)、岡 芳明(東京大学)、松田裕之(横浜国立大学)、杉原 薫(京都大学)、野村泰伸(大阪大学)、恒川篤史(鳥取大学)、田辺信介(愛媛大学)、山下俊一(長崎大学)、今井康之(静岡県立大学)、佐々木雅幸(大阪市立大学)、天児 慧(早稲田大学)、立岩真也(立命館大学)、山中康裕(北海道大学)、嘉糠洋陸(帯広畜産大学)、中静 透(東北大学)、赤林 朗(東京大学)、片岡一則(東京大学)、平井秀一郎(東京工業大学)、河野隆二(横浜国立大学)、八尾 健(京都大学)、前川二太郎(鳥取大学)、永島英夫(九州大学)、坂上雅道(玉川大学)、熊井英水(近畿大学)、岩下明裕(北海道大学)、森下真一(東京大学)、井田 茂(東京工業大学)、安成哲三(名古屋大学)、寶 馨(京都大学)、石黒 浩(大阪大学)、矢原徹一(九州大学)、大和雅之(東京女子医科大学)、彼末一之(早稲田大学)




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