ウイルス制御分野 博士課程3年 蜂谷敦子
2007.11.11〜11.14 
8th Annual Symposium on Antiviral Drug Resistance: Targets and Mechanisms
Virginia Crossings Resort in Richmond, Virginia


2007年11月11日〜14日にかけて、アメリカ、バージニア州、リッチモンドで行われた8th Annual Symposium on Antiviral Drug Resistance: Targets and Mechanismsという学会に参加して参りました。リッチモンドはワシントンDCから160Kmほど南下した、バージニア州中心部に位置する州都です。また同じバージニア州に位置するジェームスタウンでは、17世紀初頭、最初に入植したイギリス人がこの土地をバージニアと名付け、そしてアメリカ国史の出発点となった場所でもあります。

 
発表内容
Amino Acid Mutation N348I in the Connection Subdomain of HIV-1 Reverse Transcriptase (RT) Confers Multi-Class Resistance to Nucleoside and Nonnucleoside RT inhibitors.


これまでに我々は、薬剤感受性試験(phenotype)と耐性検査(genotype)の結果が乖離するウイルスを見いだした。このサンプルから新しい耐性変異N348Iを同定し、またこの変異がNRTIだけでなく、NNRTIに耐性を示すことを明かとした。今回、臨床的解析から、この変異がAZT、ddIによって誘導され、またこの変異の出現にはTAMsを伴っていた。また立体構造解析によるNRTI、NNRTI耐性メカニズムの推測は、NからIに変化することによりThumbのヒンジ部分となる317との水素結合が失われること、Thumb周辺のアミノ酸との相互作用に影響を及ぼすことで、NNRTI結合部位の変化やtemplateのgrip力に影響を与え、両者の薬剤に対し耐性をもたらすと考えられた。NRTIとNNRTIに対する多剤耐性変異であること、また臨床検体での出現頻度が高いこと、さらに現在行われている大多数の薬剤耐性検査やリコンビナントウイルスによる薬剤感受性試験の解析領域にN348Iが含まれていないことから、今後耐性検査法を見直す必要性があると考えられた。

 
発表の成果
ポスター会場では、同じような発表をしているグループと情報交換が出来たこと、また参加した研究者の興味がどの部分に集中しているのか知ることができ、今後、この研究の方向性に役立つ情報が得られた。
 
海外発表の感想
今回リッチモンドで行われた学会は、ピッツバーグ大学ならびにNCI(National Cancer Institute)のHIV薬剤耐性プログラムの主催によるもので、比較的少人数で行われる学会でした。大きな学会とは異なり、抄録提出が直前まで可能であったため、参加した大多数の先生方が最新のデータを報告しているように見受けられました。また耐性に関する研究が中心で、どの報告も興味深く聞くことが出来、この分野で最前線とされる研究の方向性を知ることが出来ました。また本学会は小人数であること、全員同ホテルに滞在していることから、参加者内での親密感が増し、学会会場だけでなく、食事などの時間を利用して、自己紹介やディスカッションが頻繁に行われていました。大きな学会では英語が堪能でなければ話しかけられない雰囲気もありますが、今回のような学会であれば気さくに交流、情報交換をすることが出来たこと、またこの機会をもとに新たな共同研究依頼をすることが出来たことに大きな成果が得られたと思います。
 
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