Keystone Symposia
HIV Vaccine: From Basic Research to Clinical Trials and Molecular and Cellular Determinant of HIV Pathogenesis
成果発表(March 26: ポスター発表)
Responses of cytotoxic T cells to escape mutation of immunodominant HIV-1 Nef epitope.
Mamoru Fujiwara1, Junko Tanuma2, Yuka Kawashima1, Hirokazu Koizumi1, Kazutaka Honda1, Shinichi Oka2, and Masafumi Takiguchi1.
1. Division of Viral Immunology, Center for AIDS Research, Kumamoto University.
2. AIDS Clinical Center, International Medical Center of Japan.
HIV-1複製の制御にはHIV-1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が非常に重要な役割を果たしているが、強力な免疫選択圧は容易にHIV-1の逃避変異を誘導してしまう。幾つかのヒト・サルを用いた研究では、そのような変異ウイルスが新たな宿主に感染しても変異抗原に特異的なCTLがほとんど誘導されないことを報告している。
HLA-A*2402拘束性Nef138-10特異的CTLからの逃避変異であるNef138-10-2F(2番目のアミノ酸がチロシンからフェニルアラニンに置換;2F)を持った変異ウイルス(2Fウイルス)は、日本人の中で広く伝播しているウイルスである。本研究で我々は、2Fウイルスが新たにHLA-A*2402陽性の宿主に感染すると2F特異的CTLが誘導されることを見出した。

結果
1. 日本人の約70%がHLA-A*2402を持っており、Nef138-10特異的CTLはHLA-A*2402陽性感染者において非常に高頻度に認められるドミナントCTLである。
2. Nef138-10特異的CTLは、野生型(WT)HIV-1の増殖を強力に抑制する。しかし、Nef138-10特異的CTLは2Fウイルスに対して全く抗ウイルス活性を示さない。
3. 2Fウイルスに感染したHLA-A*2402陽性の日本人では2F特異的CTLが誘導される。2F特異的CTLは、WTと2Fウイルスの両方に対して抗ウイルス活性を示すが、2Fに対する活性はWTに対する活性よりも著しく低い。

これらの結果から、2FウイルスはHLA-A*2402陽性の宿主に感染すると、抗ウイルス活性の低い2F特異的CTLを誘導し、その変異を維持していると考えられる。そのため、日本人の中で2Fウイルスが非常に広く伝播するようになったことが示唆された。



最後に
今回のキーストンシンポジウムに参加して、これからのHIV-1研究の方向性を肌で感じることができました。口頭発表の内容は、取り組みにそれぞれ面白味があり大変勉強になりましたし、ポスター発表では発表者の方との議論を通して「帰ったらやってみよう」というアイディアを幾つも得ることができました。また、私自身のポスター発表では、様々な研究分野の方々からアドバイスやコメントを頂き、これからの研究に対するモチベーションを高めることができました。
最初は参加するかどうかを迷っていましたが、終わってみるとやはり参加してよかったと思います。このような機会を与えて下さった滝口先生や事務的な手続きを行って頂いた秘書の方々には心より感謝いたします。