2007.2.25〜3.4 Los Angeles and Columbia in Missouri.

 
医療センターに通院する患者を対象に薬剤感受性試験、耐性試験を行ったところ、その結果に乖離する検体がみつかった。
この症例は、4ポイントにおいて、ウイルスが分離(A,B,C,D)された。
治療中に分離されたウイルスA,BではNNRTIの耐性変異が全くないにもかかわらず、薬剤感受性試験においてDLV、NVPに対し、高度耐性を示した。またウイルスC,Dは治療中断中に分離され、感受性を示した。
そのためこれまで報告されていない薬剤耐性変異を持つ可能性があり、この後の実験に耐性株:Bと感受性株:Cを用いて、組換えウイルスを作成し、変異を同定することとした。
RT領域を大きくN末側(16-267aa)、C末側(268-500aa)にわけ、それぞれ患者由来のウイルス(耐性株:B、感受性株:C)と組換えを行い、組換えウイルスを作成した。得られたウイルスは、NNRTIに対する薬剤感受性試験を行った。
N末側を耐性株(B)と置き換えてもNNRTIに対し耐性を示さなかったが、C末側を耐性株(B)と置き換えたウイルスが、DLV、NVPに対する耐性を示した。
これまで報告されているNNRTIに対する耐性変異はN末側に集中しているが、今回のDLV、NVPに耐性を示す変異は、これまでほとんど解析がなされていないC末側に存在することが明かとなった。
さらにC末側に存在する変異について、耐性株(B)と感受性株(C)で比較したところ、N348I、I393Lの2つの変異が見つかった。この変異を持つウイルスをsite-directed mutagenesis法を用いて作成し、薬剤感受性試験を行った。
N348Iの変異が、DLV、NVPに対し耐性を示し、この変異が耐性に関与していることが明かとなった。
またI393Lにおいては、これらの薬剤に対し感受性を示し、耐性に関与しておらず、この患者特有のポルモルフィズムであると考えられた。
さらに作用機序の異なるNRTIsに対する薬剤感受性試験を行ったところ、N348Iは、AZTやddIにも耐性を示した。
つまりN348Iは、NNRTIのDLVやNVPだけでなく、NRTIのAZT、ddIにも耐性を示すという多剤耐性変異であることが明かとなった。
臨床検体におけるN348Iの出現頻度を比較した。
耐性を示したAZTやddI服用中の患者48名を調べたところ、N348Iをもつ患者は6例見つかった。出現頻度としては13%であり、これまでにMDRとして報告されている69insや151と比べて、出現する頻度が高いと思われた。
また無治療者、AZTやddIを使用していなかった患者183例では、N348Iは全く検出されなかった。
これらの2群を比較すると、統計学的に有意な差が認められた。(p<0.0001)
つまりMDRであるN348Iは、AZTやddIの治療において誘導されると考えられた。
 
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