4th IAS Conference on HIV Pathogenesis, Treatment and Prevention
22-25 July 2007 Sydney, Australia


今回印象に残った発表

1 Cytolytic CD4+ T cells induce HIV-1 escape in vitro
M, Pagan


CD4+ T cell は順応的な免疫反応において重要な役割を担い、他の免疫細胞に指示を出しています。近年の研究で、in vitro, ex vivoにおいてエフェクターCD4+ T cellがHIV特異的細胞傷害活性を媒介しているということが分かっています。そして、筆者らは生体内でCD8+ CTLと同様に、エフェクターCD4+ T cellも逃避変異を誘導しているのではないかという仮説の元に研究を行なっていました。筆者らは、HIV特異的なエフェクターCD4+ T cellクローンを樹立後、これらのクローンとHIVを感染させたT cell lineを共培養し、ウイルスの抑制レベル、変異体の出現を長期間にわたりモニターしていました。結果は、エフェクターCD4+ T cellクローンとHIVを感染させたT cell lineを共培養させることで、エピトープ部位に変異が入っているウイルスの出現を確認していました(Table 1)。そしてこれらの変異ペプチドを用いて、ELISpot assayを行なうと、特定の変異ペプチドに対しエフェクターCD4+ T cellクローンの活性が非常に低くなることが分かりました(Fig 1)。これらの結果よりin vitroにおいてエフェクターCD4+ T cellクローンは、HIVの逃避変異を誘導していることを実証していました。
2 Gag-specific CD4+ IFN-γ+ IL-2+ T cells facilitate the control of viremia and preservation of central memory CD4+ T cells in SIV-infected macaques
R, Mason


こちらもCD4+ T cellをターゲットとした研究ですが、先に紹介したのはエフェクターCD4+ T cellに対し、こちらはメモリーCD4+ T cell(CD28+, CD95+, CD4+)をターゲットとしています。筆者らは長期間SIVに感染したpigtail macaqueを用いてメモリーCD4+ T cellの機能を調べていました。まず筆者らは、32匹のpigtail macaqueにSIVmac251を慢性感染させ、これらのメモリーCD4+ T cell をカウントし、次にSIVのGag, Pol, Envペプチド と Rev, Tat, Nef, Vif, Vpr, Vpx (RTNVVV) のカクテルペプチドを用いて、これらのペプチドに対するメモリーCD4+ T cellのIFN-γ産生能を細胞内染色にて評価していました。結果は、メモリーCD4+ T cellのカウント数が高いものほど生存率が高く、メモリーCD4+ T cellカウントとウイルス量は負の相関を示すことを示していました(Fig 2)。さらに、Gag ペプチドに対し高いIFN-γの産生を示す個体は体内ウイルス量が低く、メモリーCD4+ T cell数が高くなると示されていました。これらの事は、2007年にGoulderらによって報告されたHIVにおけるCD8+ T cellの結果(Fig 3)と同様の結果が得られていることから、Gag-specific CD4+ T cellもHIVワクチンのターゲットとなるのではないとまとめていました。

3 Prophylactic HIV Vaccines: Where Are We? -Correlates of Immunity-
Bruce D. Walker, M.D.

HIVに関する論文を検索すると、必ずこの名前が出てくる位に有名な先生です。発表後のディスカッションも、最も盛り上がっている印象を受けました。
発表内容は、Gag特異的CTLの応答が高いとウイルス量が低く、Env特異的CTLの応答が高いとウイルス量が高くなるというGoulderらの論文(Nature Medicine. 2007 )の内容に、Replication Assayの結果をプラスしていました。結果は、やはりGag特異的CTLの方が、Env特異的CTLと比較して有意にウイルスの複製を抑えていることが示されていました(Fig 4)。これらの結果によって、研究の流行がさらにGag特異的CTLに向かって加速していくのではないかと思わされました。
 
最後に
このような国際学会に参加する機会を下さった滝口先生、事務的手続きを行なってくれた秘書の方々、参加前にアドバイスを頂いたウイルス制御分野の皆さんに大変感謝しています。この貴重な経験を、今後の研究に生かすことが出来るように日々精進していく所存です。