Keystone
Symposia Conference (Immunologic Memory) March 3 - 8, 2007, Eldorado Hotel & Spa, Santa Fe, New Mexico 熊本大学大学院医学教育部病態制御学専攻ウイルス制御学 高田 比呂志 |
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1. 研究室訪問@UCSF | |
実は私にとってサンフランシスコに行くのは二度目でしたが、初めてアメリカの研究室の訪問ということで以前に増して楽しみにしていました。しかし、今回はただの訪問というわけではなく、
informalではありますがセミナーで私の研究を話させていただくということで、緊張もしつつ訪問させていただきました。 UCSFは私たちでもその名前を聞いたことがあるほどのアメリカでも屈指の名門大学です。カリフォルニア大学はこのUCSFの他にも、カリフォルニア州全土に9のキャンパスをもつ米国最大規模の州立大学です。また、UCSFを除く他のキャンパスは総合大学になっていますが、このUCSFは日本で言うところの医学部のみの医学系大学院大学です。 到着早々、研究室にお邪魔させていただきました。右の写真はサンフランシスコ総合病院・実験医学分野研究棟の前で取った写真です。この建物にニクソン先生の研究室がありました。 私たちのエイズ学研究センターもセキュリティーには万全を期していますが、こちらではさらに厳格なものになっていました。建物や各フロアーの入り口だけでなく、エレベーターや主要な実験室の入り口にはすべてセキュリティーがかかっていました。 |
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二日間の滞在中にはニクソン先生の研究室の方と、研究についてのお話や、こちらでの研究生活についていろいろなお話を伺いました。その中で、米国と日本との研究室の構成がかなり違うということを実感しました。日本では大学院生がそのほとんどを占めますが、アメリカでは学生はわずかでほとんどはポスドク(博士号取得後の研究員)なのだそうです。したがって、日本の研究室のボスはどうやってその大勢の学生を教育しているのかという質問が…また、日本では学位論文の発表会は審査会もかねている、つまりテストなわけですが、アメリカでは発表会の前に審査は面接で行われ、発表会はセレモニーに近いものだそうです。ここでも、日本とアメリカの大学院違いを感じました。 | |
さて、実際にこちらで行われている研究ですが、すべてがヒトのサンプル、そのほとんどがHIVの患者さんから頂いた末梢血から分離した単核細胞を用いた実験であると伺いました。私の所属するウイルス制御分野では、患者さんの持っているHIV特異的CD8+ T細胞に焦点を当てて研究を行っていますが、こちらでは健常人と患者さんにおけるCD8+ T細胞はもちろんの事、NK細胞・NKT細胞・ Treg細胞の質的・量的な違いについて研究をされていました。また、日本ではほとんど行われていない小児HIV感染症やスパーインフェクションに関する研究にも力を入れられていました。 | |
滞在二日目は、朝からニクソン先生の研究室のラボミーティングに出席させていただき、その中で45分ほど私の研究についてお話しをさせていただきました。内容としましては、私が焦点を当てて研究しているヒトエフェクターCD8+
T細胞に存在するIL-2産生能と自己増殖能の異なるサブセットについて発表させていただきました。実はこんなに長いプレゼンテーションをするのが日本語でも英語でも初めてだったので、ドキドキで、私にとってこの機会は挑戦でもありました。しかし、このために、今年の初めから「魅力ある大学院教育」の一環として、プレゼンテーションに向けた英会話教室を特別に受けさせていただきました。その成果として、台本を読むのではなく、ラボの方の顔を見ながらプレゼンテーションすることが出来ました。やはり、欧米の方は日本人よりもプレゼンテーションにより慣れてらっしゃるので、発表の途中にも、分からないことをリアルタイムで質問して下さいました。その質問も、私が緊張して言い忘れてしまった、実験系になどについて指摘して頂き、逆に私のプレゼンテーションを助けて頂きました。総じて、私の発表を聞いていただいた方には、大筋私の研究について理解していただけたと思います。プレゼンテーション終了後、ニクソン先生を初め数人の方から質問・貴重なご意見を頂きました。
私の研究では健常人におけるエフェクターCD8+ T細胞のみを解析していたため、HIV感染者の中ではどうなっているのかという質問や、最近PD-1がIL-2産生能や自己増殖能の喪失と言った機能不全に関与していることが報告されていることから、私の解析したサブセットにおけるPD-1の発現についての質問、そして私が二つのエフェクターサブセットのIL-2反応性の違いを解析していたので、IL-2受容体の発現についても質問をいただきました。 これらのことは、この研究を今後論文にするために非常に重要であることから、答えを持っていなかったものに関しては、投稿論文完成に向けて現在実験を開始しています。 |
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