2001-2003

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Sobao, Y., Tomiyama, H., Nakamura, S., Sekihara, H., Tanaka, K., Takiguchi, M. (2001) Visual demonstration of HCV-specific memory CD8+ T cell expansion in patients with acute hepatitis C. Hepatology. 33:287-94.

 C型肝炎ウイルス(HCV)は感染後、急性肝炎を引き起こし、そのうち50-90%が、ウイルスを排除できないまま慢性化するとされている。慢性C型肝炎患者の末梢血や肝組織に、HCV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)が存在することは明らかとなっているが、CTLが存在しながらなぜウイルスを排除できないのか明らかではない。また、HCVを排除しえた急性C型肝炎患者におけるHCV特異的CTLは、慢性C型肝炎患者のそれと量的、質的にどのような相違があるのかも明らかではない。そこで、HCV特異的CTLの解析は従来、その末梢血における頻度が極めて低いことから、数回にもおよぶIn vitroでの抗原刺激と長期培養を必要としたため困難を極めた。そこで、HCV特異的CTLのみに結合する、HAL-class I-peptide-tetrameric complexを作成することにより、極めて少数のHCV特異的CTLの検出を試みた。その結果、慢性C型肝炎患者の末梢血からはCD8陽性細胞中0.05〜0.12%のHCV特異的CTLを検出したが、ウイルスを排除しえた急性C型肝炎患者の末梢血からは、その数倍高い頻度のHCV特異的CTLを検出した。さらに、急性C型肝炎患者の急性期に増加しているHCV特異的CTLは、CD28陽性CD45RA陰性というMemory T細胞とされるCTLであり、そのMemory type CTLは急性肝炎の回復期にはすみやかに減少していた。一方、慢性C型肝炎患者において存在するHCV特異的CTLはそのような特定のphenotypeを示さなかった。以上より、急性C型肝炎の急性期に増加しているHCV特異的CTLはMemory typeであり、ウイルスの排除、抑制に重要な役割を果たしていると考えられた。  

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