2001-2003

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Tomiyama, H., Akari, H., Adachi, A. and Takiguchi, M. (2002) Different effects of Nef-mediated HLA class I down-regulation on HIV-1-specific CD8+ T cell cytokine activity and cytokine production. J. Virol. 76:7535-7543.

高頻度の特異的CD8+ T細胞が誘導されるにもかかわらず、HIV-1は感染者の体烽ゥら完全には除去されない。HIV-1が特異的CD8+ T細胞の認識を免れる機構については多くの報告があるが、いまだに明らかにされてはいない。
HIV-1感染細胞ではNefタンパクの作用によりCD8+T細胞に抗原を提示するHLA-ClassI分子の発現低下(down-regulation)が起きることが知られている。Collins等は、HIV-1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)がNef+のHIV-1感染CD4+T細胞に対して細胞傷害活性を示せないことを明らかにし、NefによるHLA-ClassI分子のdown-regulationがHIV-1の免疫回避機構の一つであることを示唆した。われわれも同様に、HIV-1特異的CTL cloneがNef+HIV-1感染CD4+T細胞(健常人から単離した)に対して細胞傷害活性を示さないことを確認した。
HIV-1特異的CD8+ T細胞はサイトカイン及びケモカインなどの液性因子を分泌し、これらの作用によっても、HIV-1の増殖を阻害していることが知られている。しかし、感染細胞のHLA-ClassIのdown-regulationがCD8 T細胞の液性因子に影響しているかどうかは明らかにされていない。われわれは、HIV-1感染細胞でHIV-1特異的CTLを刺激し、CTLの液性因子産生能を解析した。
Nef+ のHIV-1感染細胞で刺激されたHIV-1特異的CTL cloneはインターフェロン-γ、TNF-α、MIP-1βなどの液性因子を産生した。しかし、その産生量はNef変異HIV-1(HLA-ClassIのdown-regulationを起こさない)感染細胞で刺激を受けたものに比較して少なかった。これらの結果は、NefタンパクによるHLA-ClassIのdown-regulationが特異的CTLの液性因子産生にも影響していることを示しているが、細胞傷害活性に対するものと比べてその影響は少なく、CD8 T 細胞はNef+HIV-1感染細胞の刺激により少量の液性因子を産生することが示された。さらに、特異的CTLが感染細胞のHLA-ClassIのdown-regulationにもかかわらず、HIV-1の増殖を抑制出来るかどうかをHIV-1感染直後のCD4+T細胞をCTL cloneと共培養し確認した。結果、特異的CTL clone は、Nef+のHIV-1の増殖をCTLが部分的ではあるが抑制していることが示された。尚、Nef変異HIV-1感染細胞とCTL cloneの共培養では、HIV-1の増殖は完全に抑制された。以上の結果により、HIV-1 特異的CTLは液性因子の作用により、部分的にNef+ HIV-1の増殖を抑制していることが示唆された。
また、本検討の結果から、Nefによる感染細胞のHLA-ClassIのdown-regulationが、感染者体内においてHIV-1特異的CTLがHIV-1の増殖を部分的には抑制するが、完全に除去することが出来ない原因の一つであることが推察された

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