2001-2003

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Fukada, K., Tomiyama, H., Wasi, C., Matsuda, T., Kusagawa, S., Sato, H., Oka, S., Takebe, Y. and Takiguchi, M. Cytotoxic T Cell Recognition of HIV-1 Cross-Clade and Clade-Specific Epitopes in HIV-1-infected Thais and Japanese. AIDS. 16:701-711(2002). 

HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス)特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)エピトープを同定することは、AIDS(後天性ヒト免疫不全症候群)の病原性やワクチン開発などの様々な研究のために重要である。HIV-1 clade B感染者において多数のclade B特異的CTLエピトープが同定されているのとは対照的に、その以外のnon-clade B特異的なCTLエピトープはclade A感染者またはclade C感染者において少数報告されているのみである。われわれは、既知である8種のHLA-A*1101拘束性HIV-1 clade B特異的CTLエピトープを用いて、東南アジアにおいて比較的多いサブタイプであるHIV-1 clade Eで認識されているCTLエピトープを同定することを試みた。まず、clade E 特異的CTLを誘導できるかについてタイのclade E 感染者の末梢血単核球(PBMC)をclade B特異的CTLエピトープに相当するclade Eペプチドで刺激することにより調べた。さらに、CTLエピトープがclade間で共通(cross-clade)またはclade特異的に認識されるかに関してCTLクローンおよびbulk CTLを用いて解析した。Pol蛋白由来の3種のCTLエピトープはHIV-1 clade Aからclade Eのサブタイプ間で共通のシークエンスであり、これらはタイのclade E感染者においてもcross-clade CTLエピトープとして認識されていた。3種のCTLエピトープ領域に相当するclade Bおよびclade Eペプチドは、それぞれ日本のclade B感染者およびタイのclade E感染者においてclade特異的なCTLエピトープとして認識されていた。対照的に、他の2種のclade B特異的CTLエピトープに相当するclade Eペプチドは、clade E特異的CTLを誘導できなかった。HIV-1感染T細胞におけるこれらのCTLエピトープの抗原提示を明らかにするために、3種のcross-clade CTLエピトープおよび3種のclade E特異的CTLエピトープに対するCTLの認識についてHIV-1 clade Eウイルスクローンに感染したCD4(+) CXCR4(+)細胞を用いて観察した。これらを認識するCTLはclade Eウイルスに感染した標的細胞を効率よく傷害したことから、6種のCTLエピトープはclade Eウイルス感染細胞において自然にプロセッシングされ抗原提示されていることが示された。本研究においてわれわれは、HIV-1 clade B特異的CTLエピトープを利用したこの方策がclade E特異的CTLエピトープを効率よく決定するために大変有用であることを示した。

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