ケモカインレセプターCCR6はヒト末梢エフェクターメモリーCD8+T細胞に機能的発現をしている。
Functional expression of chemokine receptor CCR6 on human Effector Memory CD8+ T cells.
Takaaki Kondo, Hiroshi Takata, and Masafumi Takiguchi
CD8+T細胞はウイルス感染細胞除去において非常に重要な役割を担っており、ウイルス特異的CD8+T細胞によるウイルス感染細胞のコントロールを詳細に解明するためにはCD8+T細胞の分化・成熟についての研究を行うことが重要である。しかし、健常人におけるCD8+T細胞の分化・成熟については分化経路や機能など未だ不明な点が多く、十分な検討はされていない。そこで、新たな分化マーカーを用いたCD8+T細胞の分化・成熟について詳細な解析が求められている。

近年新たな分化マーカーとしてケモカインレセプターが注目されており、CCR7、CCR5等のケモカインレセプターはCD8+T細胞のナイーブ、メモリー、エフェクターという各機能的集団に特異的に発現している事が報告されている。CCR6はCD4、CD8+T細胞、B細胞、未成熟樹状細胞で発現が報告されており、リガンドであるCCL20 / MIP-3a の発現している腸管や皮膚に未成熟樹状細胞を誘導する役割を担っている。現在、CCR6の発現は一部のCD8+T細胞での発現が確認されているが、その詳細な解析は行われていない。そこで私はCD8+T細胞の分化・成熟段階におけるCCR6の発現を様々な分化マーカーを用いて解析し、CCR6+CD8+T細胞の特性を調べ、CCR6がヒト末梢CD8+T細胞において新たな分化マーカーとなりうるか検討を行った。

最大8色におよぶマルチカラーフローサイトメトリー解析により、ヒト末梢CD8+T細胞の分化・成熟段階におけるCCR6の発現は免疫記憶を担うと考えられているメモリー分画に特異的に発現しエフェクターメモリー分画に発現の高いCCR5と非常に高い相関性を示すことが確認された。また、CCR6+CD8+T細胞は標的細胞に小孔を形成するパーフォリンの発現が低く標的細胞のアポトーシスを誘導するグランザイムAを発現するがグランザイムBを発現していない細胞集団であり、CCR6+CD8+T細胞の多くがIFN-gとTNF-aを産生しIL-2の産生が少ない細胞集団であることが示された。さらにヒト末梢CCR6+CD8+T細胞はリガンドであるCCL20 / MIP-3aに特異的な遊走能を示し、腸管に特異的に発現している接着分子の発現が高いことから末梢血中のCCR6陽性エフェクターメモリーCD8+T細胞が腸管、皮膚への遊走に関わっている可能性が示唆され、粘膜免疫における感染細胞の排除に重要な役割を果たしていることが考えられた。また、ヒト末梢CD8+T細胞においてCCR6はCCR5と共に新たな分化マーカーとなる可能性が示唆された。

 

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