3つの細胞傷害性エフェクター分子の発現によって識別される3つのヒトメモリーCD8+ T細胞集団
Three memory subsets of human CD8+ T cells differently expressing 3 cytolytic effector molecules
高田比呂志、滝口雅文
Perforin(Per)、Granzyme A(GraA)、Granzyme B(GraB)の発現をマルチカラーフローサイトメトリーにより解析したところ、ヒトCD8+ T細胞は5つのエフェクター分子の発現の異なる集団によって構成されていることが分かった。また、このことはヒトCD8+ T細胞がPer-GraA-GraB-? Per-GraA+GraB-? PerlowGraA+GraB-? PerlowGraA+GraB+? PerhighGraA+GraB+と分化してゆくことを示唆している。この3つのエフェクター分子の発現様式を二つのT細胞分化・成熟モデル(CCR7/CD45RAとCD27/CD28/CD45RAの発現によって識別される)において解析してみると、これらの分化・成熟モデルでは部分的にしか機能を反映していないことが分かった。しかし、5つの細胞表面マーカーCCR7/CCR5/CD27/CD28/CD45RA、または三つのエフェクター分子と3つの細胞表面マーカーPer/GraA/GraB/CD27/CD28/CD45RAの発現を指標とすることで、機能的に異なるヒトCD8+ T細胞集団を同定することができると考えられる。CD27+CD28+CD45RA-のCD8+ T細胞では、Per-GraA-GraB-細胞はCCR5-CCR7+サブセットに、Per-/lowGraA+GraB-細胞はCCR5high/lowCCR7-サブセットに主に存在していた。これに対して、PerlowGraA+GraB+細胞はCD27+CD28+CD45RA-のCCR5lowCCR7-サブセットとCD27-/lowCD28+CD45RA-/+のCCR5-/lowCCR7-サブセットの一部に存在していた。さらに、Per-/lowGraA+GraB-/+であるex vivoのEBV特異的CD8+ T細胞が、非常に弱いかほとんど細胞傷害活性を示さなかったことから、これらの細胞はエフェクター細胞ではないと考えられる。以上のことから、CD45RA-サブセット中のPer-GraA-GraB-細胞をcentral memory、Per-/lowGraA+GraB-細胞をearly effector memory、PerlowGraA+GraB+細胞をlate effector memory細胞と分類した。そして、Per-/lowGraA+GraB-細胞はTCRを介した刺激にともなってGranzyme Bを発現したことから、early effector memory細胞がlate effector memory細胞・effector細胞に分化することが示唆された。本研究は、この3つのメモリーサブセットの存在と、それらの分化経路について明らかにした。

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