AIDS Vaccine 2006 Conference
August 29-September 1, 2006,RAI Congress Centre

学会内容  
今回もAIDS Vaccine conferenceに発表されたものは、どれもレベルが高いものでした。
そこで、私が特に興味を持った2つのテーマについて報告します。
 

Late escape from an HLA-B27-restricted CTL epitope in HIV-1 p24/capsid is associated with a dramatic reduction in replicative capacity
A Schneidewind, MA Brokman, RI Adam, C Brander, A kelleher, BD Walker, and TM Allen
   
HLA-B27はAIDSの発症遅延に相関があるHLAで、そのHLA拘束性のKK10というエピトープはp24/capsidに存在する。HIV-1感染者で、このエピトープに対するエスケープ変異が順番に入るということが報告されている。今回、R264K mutation (2nd mutation) は、このエピトープより約100a.a上流のS173A mutationと一時的に相関していることを彼らは見出した(図1)。

図1

   
そこで、彼らは、これらmutationがHIV-1のreplication (fitness)にどれだけ影響を与えるかを調べたところ、1st mutationウイルスは、オリジナルと同等のreplication能を示した。一方、2nd mutation (R264K)ウイルスに関しては、劇的にreplication能が低下した。しかし、そこにS173A mutationを加えたウイルス(S173A, R264K)のreplication能を解析したところ、急激に回復した(オリジナルと比較し88%)。
   
それでは、なぜ、約100a.a離れている部分がウイルスの複製に影響を与えているのかを、HIV-1 p24タンパクの3次構造から解析したところ、KK10エピトープと173番アミノ酸は、極めて隣接していることを明らかにした(図2)。

図2

   
KK10-specific CTLからのescapeは、HIV-1の複製の維持のため、2つ同時に変異が入る必要がある。
したがって、このことから、KK10-specific CTLからのescape mutantの出現が遅い原因であることを示唆した。

Upregulation of PD-1 expression in HIV specific CD8 T cells leads to reversible functional exhausion
L Trautmann, L Janbazian, N Chomont, B Besstte, R Boulassel, J-P Routy, E K. Haddad, and R-P Sekaly
   
Programmed Death1 (PD-1)とそのリガンドであるPD-L1, PD-L2の結合は、CD3抗体を介したproliferationやサイトカイン産生を阻害する。 LCMV感染したマウスで、PD-1/PD-L1 pathwayをBlockingすると、exhausted CD8+ T cellの増殖能、サイトカイン産生能、細胞傷害活性が
回復したことが以前報告された。 
 
そこで、今回、彼らが報告したことは。。
 HIV-1慢性感染期のHIV-1-specific CD8+ T cells は機能的に障害されている(サイトカイン産生、増殖能)。
そこで、彼らは、そのHIV-1-specific CD8+ T cell 上で、PD-1がupregulateしていることを報告し、さらに、その発現レベルが有意に、
ウイルス量とサイトカイン産生能、増殖能の低下に相関していた。一方、同じ患者からのCMV- とEBV-specific CD8+ T cellはPD-1がupregulateされておらず、抗原特異的なサイトカイン産生能も高く維持されていた。
また、PD-1/PD-L1 pathwayをBlockingしたところ、HIV-1-specific CD8+ T cellsの増殖、サイトカイン産生を増強させた。
 したがって、彼らの報告は、機能障害なHIV-1-specific CD8+ T cellのPD-1の役割を論証しただけでなく、PD-1/PD-L1の結合を
blockすることで、その機能を回復させることができることを示した。

   
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