2008.2.3〜2.6 
Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI 2008)
Boston, USA.
   
3日目は、興味のあるポスターがいくつかあったので、逆に質問をしにいきました。基本的にはAPOBEC中心のポスターを見にいきました。そのなかで面白かったポスターをいくつか紹介します。

まずはHarrisらのグループの研究です。タイトルは『APOBEC3G’s Cytoplasmic Localization Is Actively Regulated but Not Required for HIV-1 Replication』です。彼らは、hAPOBEC3B, F, Gのキメラタンパク質を作り、実験を行っていました。彼らの報告では、hAPOBEC3B, F, Gの細胞内局在は、N末の部分が決めている。ただ、N末だけでは完全には局在は決まらない。また、局在と抗HIV-1活性はリンクしない。ということを報告していました。それ以上に私にとって重要な情報ももらいました。実はこの発表者は、前日に私のポスターを聞きにきてくれた人で、今自分たちの研究室でどのような研究をやっているかについても教えてくれました。

2つ目は、『Distinct Packaging Mechanisms of Human Cytidine Deaminase APOBEC3 Proteins into HIV-1 Virions』で、Yuらのグループが報告していました。それによれば、hAPOBEC3CのHIV-1粒子内への取り込みには、hAPOBEC3Gで言われているように、GagのNC domainが必要ではなく、MAとCAが必要であること。またRNAは必要だが、ウイルスRNAは必要ではないことを報告していました。hAPOBEC3Cは、我々が今研究を行っているAPOBEC1と同じ、single-deaminaseタンパク質であるので、このメカニズムは非常に興味深いものがありました。そこでそのことを発表者に伝えたら、なぜAPOBEC1を研究しようと思ったのか?という質問を逆にされてしまいました。

3つめは、『Enzymatically Active APOBEC3G Is Required for Efficient Inhibition of HIV-1』というタイトルで、Strebelらのグループの報告でした。この演題はすでに論文にもなっていて、一度読んだことがあるのですが、今APOBEC3Gの抗HIV-1メカニズムは脱アミノ化に依存するメカニズムと依存しないメカニズムがあるということが言われてきました。彼らのグループは、このことに関して、二つの系を使って証明していました。1つは、APOBEC3Gのwild-typeとmutantをtransient transfectionで発現量を同じレベルにして、抗HIV-1活性を比較しました。もう1つは、wild-typeとmutant APOBEC3Gをstableに発現しているcell lineを作り、発現量が同じレベルの細胞を使って抗HIV-1活性を比較しました。その結果、タイトルどおりAPOBEC3GがHIV-1に対して抑制活性を示すためには、cytidine deaminase domainが必要であることを示していました。このことに関しても、今の研究にも重要なので、非常に参考になりました。
   
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